銚子の引手茶屋の皆殺しと山内の懺悔
どんな伝承か
幕末、下総銚子の前橋藩の陣屋に詰めていた若侍三人は、彰義隊に加わろうと江戸への脱走を企てたが旅費がなく、なじみの引手茶屋に白刃を手に押し入った。亭主から財布を奪って引き揚げかけたとき、夜着の中から覗いていた八つの娘が客の一人を見知っていると口にしたため、三人は家の者を皆殺しにした。年月がたち、三島で模範教員となっていた山内は警察で原籍を言い当てられると、銚子の生まれで前橋藩の武士だったと認めて妻に詫び、下総へ送られて入獄し、十九年ごろ出獄した。
原典より
山内は下總の方に送られて入獄してゐたが、十九年比になつて出獄した。—— 奇談全集 現代篇(田中貢太郎・奇談全集) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
奇談全集 現代篇(田中貢太郎・奇談全集)
『奇談全集 現代篇』は、田中貢太郎が幕末から大正にかけての事件や奇談を読み物に仕立てた作品集である。明治十一年に相模の真土村で起きた松木騒動、大正十五年に千葉の久賀村一帯で起きた鬼熊の事件、香取郡の連続殺人、伊賀上野の破獄、京都の天誅などを、記録や関係者の話をもとに描き、松木騒動には筆者が大正六年に現地を訪ねた補遺を付す。播磨屋橋遺聞のように、筆者自身が創作と断る話も含む。