桐座の門口に立った弟子伊三郎
どんな伝承か
明治十七年、東京四谷の津の上――松平摂津守の本邸があった一帯で、いまの荒木町あたりにあたる花柳界の地――に、桐座という劇場が建てられた。その普請を差配した大工棟梁の和泉重五郎が、夏の末の夕方、涼をとりながら外を眺めていると、六時ごろ、門口に男が立っている。見れば弟子の伊三郎だった。いつ戻った、もう帰ったのかと声をかけると、伊三郎は黙って礼をし、そのまま消えてしまった。その夜、麹町飯田町の伊三郎の家から、彼が死んだという電報が届いた。
原典より
明治十七年のこと、東京四谷津の上(松平摂津守義生の本邸所在を津の上と云ふ、今の荒木町二十七番地其他を合わせた花柳界のある場所)に劇場桐座を建築した際の大工棟梁和泉重五郎が夏の末夕の涼を眺めてゐると、午後六時頃門口に立つて…—— 幽霊は語る(梶天真・幽霊研究・大正〜昭和(戦前)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幽霊は語る(梶天真・幽霊研究・大正〜昭和(戦前))