父の話をした矢先の危篤の報せ
どんな伝承か
昭和五十二年五月二十六日のこと。長男の文雄は当時、三田の聖徳短大の事務局に勤めていた。昼休みに同僚と雑談していると、話がなんとなく父親のことに及んだ。同僚たちはみな父を亡くしており、井上さんはいいな、まだ親父さんもおふくろさんも元気なんだろう、と言われた。文雄は軽い気持ちで、おかげさまで、ただ今は父が心臓を悪くして入院していて、と答えた。その言葉が終わらぬうちに、父危篤の電話が入ったのである。あのとき図らずも父の死の話題が出たことが、今でも不思議だという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』を小話単位で全699話収録。死の知らせ・予兆、あの世(地獄・極楽)へ行った話、死者からのサイン、生まれかわりなど、生死とあの世にまつわる現代の民話を全国から採集し地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明606話・市区町村判明489話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。