氏神に止められた渡し舟
どんな伝承か
明治三十年頃、宗ノ上の山崎千代松が赤痢で高熱を出して息絶えた。親類縁者が集まり翌日は葬式という段になって、千代松は息を吹き返す。元気になった当人が語るには、死んで三途の川へ向かうと、飾り立てた舟のそばに人が待ち構え、よい所へ連れて行ってやるから早く乗れとしきりに勧めた。極楽か地獄かは分からぬがともかく乗るしかないと舟へ近づいたとき、背後から山伏の姿をした者が現れ、自分は土地の氏神だ、その渡し舟に乗ってはならぬ、すぐ引き返せと手招きした。そのあとに従って戻ると生き返っていたという。家では葬儀の代わりに祝宴が開かれた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』を小話単位で全699話収録。死の知らせ・予兆、あの世(地獄・極楽)へ行った話、死者からのサイン、生まれかわりなど、生死とあの世にまつわる現代の民話を全国から採集し地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明606話・市区町村判明489話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。