曾孫の花嫁姿まで押し戻された舟
どんな伝承か
昭和五十四年の春、奥海印寺下条の祖母が吐血して倒れ、寝たきりになった。その頃、途切れ途切れに語ったところによれば、大きな川を舟で渡っていて向こう岸が近づいたとき、息子の忠弘が長い棒で舟を押し返したという。まだこちらへ来なくてよい、と言われて舟はするすると戻ってしまった。祖母は、曾孫の美千子の花嫁姿を見届けてから来いという意味だろう、その土産話を持って行かねばならなくなった、と受け止めた。祖母は年が明ければ九十七歳、実際に美千子の花嫁姿を見、玄孫も抱くことができた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』を小話単位で全699話収録。死の知らせ・予兆、あの世(地獄・極楽)へ行った話、死者からのサイン、生まれかわりなど、生死とあの世にまつわる現代の民話を全国から採集し地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明606話・市区町村判明489話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。