昭和五十六年に亡くなった彫刻家の倉沢興世さん(八十五
どんな伝承か
昭和五十六年に亡くなった飯田市の彫刻家・倉沢興世(八十五歳)は、救急車で病院へ運ばれてから三日間意識が混濁していた。ふと目覚めるたびに「ここはどこだ、川が流れているじゃないか」「私は今その小屋に寝ているんじゃないか、少年時代に住んでいた泰阜の家へ帰るんだ、タクシーへ電話してくれ」と口にした。夢の中のはずなのに現実のタクシーの電話番号を口にしたため、付き添っていた家族は驚いたという。翌日には「大きな蜂の巣がある」「大きな川をどう渡ればいいんだ、大勢が舟に乗っている」などと話し、そのまま一時は回復したものの、間もなく亡くなった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』を小話単位で全699話収録。死の知らせ・予兆、あの世(地獄・極楽)へ行った話、死者からのサイン、生まれかわりなど、生死とあの世にまつわる現代の民話を全国から採集し地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明606話・市区町村判明489話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。