伐るたび鳴動した箱根の山林
どんな伝承か
箱根山の帝室林野管理所に詰めていた人が、土地の津田次郎吉から直に聞いたという話である。明治より前の箱根の山林は鬱蒼として、大木の重なる場所では白昼でも提灯なしには歩けないほどで、山には天狗がいると言われていた。明治の初めから伐採が始まると、晴天の日でも木を伐るたびに山が鳴動し、大木の倒れる音や小枝のもげる音が凄まじく響いた。誰もいないはずの場所で起こるのである。さらに飛行機の唸りのような怪音が上空を行き来し、人々は這う這うの体で山を飛び出した。人が引き上げると荒れは自ずと静まり、日は麗らかに照っていたという。年月がたって山が明るくなるにつれ、こうした怪事も絶えていった。
原典より
箱根山の帝室林野管理所に詰めて居た人が、土地の津田次郎吉なる人の直話として左の如きことを聴かしてくれた。—— 幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵(岡田蒼溟・幽冥界研究・怪談・大正〜昭和(戦前)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵(岡田蒼溟・幽冥界研究・怪談・大正〜昭和(戦前))