女湯に入った女装の男
どんな伝承か
十八日夜十時半頃、芝区烏森八六の橋木湯の女浴室へ、とても美しいモダンガールが入って来た。浴客がひょいとこの婦人の乳のあたりを見ると、どうも普通の女と違う。たちまち大騒ぎとなり、当人はたまりかねて着物を引っ掛けるより矢庭に飛び出したが、とうとう隠しきれぬところを見せて、女装した男と判明した。「男が女湯に来るとは怪しからん」と客たちが後をつけたところ、この男は芝愛宕下町一の二一のカフェ昇竜で女給をしている杉山よし(十九)で、愛宕署の取調べにまぎれもない男だと自白した。京都下京区に生まれ、幼い時に両親に捨てられ、旅芸人の皆川新治の養女として常に女装で旅から旅へ稼いでいたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方編著・日本怪奇集成・昭和初期(推定昭和2-3年))
明治・大正・昭和の怪奇譚(日本怪奇集成)/生首と幽霊の怪/狐狸のいたずら/怪盗と世相の怪異/各時代の不思議な事件