竹藪へ消えた死の直後の祖父
どんな伝承か
昭和九年三月二十六日、小学生だった著者は千葉県館山市で、同じ町内に別々に暮らす祖父と母の家を行き来していた。その日は母の家で夕食をとり、午後六時過ぎに祖父の家へ戻る途中、畑と竹藪にはさまれた細い道で、向こうから来る祖父の姿を見つけた。祖父はいつものように笑いかけることもなく黙ってこちらを見つめ、すっと竹藪の中へ入っていった。追って覗き込んでも誰もいない。家に帰ると明かりは消え、座敷で祖父が倒れて息絶えていた。医者の見立てでは脳卒中で、亡くなったのは午後五時ごろ。著者が道で見たのは死後の祖父の姿だったことになり、初めて目にした物体化した霊だったという。
原典より
祖父が、玄関につづく座敷で、白眼をむき、両手で虚空をつかむような姿で死んでいたのである。—— 霊魂の謎-新版タナトロギー入門(中岡俊哉・1990年(平成2年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊魂の謎-新版タナトロギー入門(中岡俊哉・1990年(平成2年))
『霊魂の謎-新版タナトロギー入門』は、昭和四十八年に新書版で出た『タナトロギー入門』を、中岡俊哉が文庫化にあたって大幅に加筆・訂正した心霊研究の本で、まえがきは一九九〇年九月付である。著者自身の霊体験から説き起こし、背後霊・地縛霊・騒霊・悪霊・祖先霊・金縛り・淫霊の事例、臨死体験と転生、死者の声の録音や自動書記、恐山のイタコ、心霊治療、心霊写真の鑑定を国内外の例で述べる。まえがきでは「七疑三信」という著者の調査の立場を語っている。