高砂
どんな伝承か
埼玉県草加市高砂で、昭和十九年、戦時下のこと。姉一家や実母と同居していた著者の実兄・内田良隆は、その年、勝田部隊に所属して南方へ出征した。出発に際し、母のことをくれぐれも頼むと言い残していった。七月頃のある夜、母と著者は同じ夜に兄の夢を見た。著者は、ふすまを開ける音で目を覚ますと、兄が紺の背広姿で無言で立っている夢を見た。母は、姉が兄の戦死の知らせを隠しているのが口惜しいと泣く夢だったという。その後およそ一年たって戦死の公報が届き、兄は一年前の七月にすでに死んでいたことが判明した。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂(松谷みよ子・現代民話考・昭和50年代~60年代(推定))
松谷みよ子『現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂』を小話単位で全513話収録。夢のお告げ・予知夢、火の玉、ぬけ出した魂(離魂)など、心と生死の境にまつわる現代の民話を全国から採集し収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明482話・市区町村判明386話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。