藤原(2)
どんな伝承か
昭和十三年五月十六日の朝のこと。羽目一つ隔てた向こうに私の父が寝ていたが、ウ、ウーウーと苦しい声を出す。おじい、おじいと呼ぶと、アーア、たまげた、今、もち草が三本あって見えないけれど、マサミツ(孫)だかウタ(私の夫)だかが塹壕の中に倒れているから、見さだめようと思って、もち草を一生懸命ひっぱったが、二つは切れたけれど一つはまだ切れないと言い、布団の〆糸をこんなに伸ばして見せた。六時頃だったが、ちょうど私も夫の夢を見た時刻であった。あとで夫の戦死の公報が来たのだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂(松谷みよ子・現代民話考・昭和50年代~60年代(推定))
松谷みよ子『現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂』を小話単位で全513話収録。夢のお告げ・予知夢、火の玉、ぬけ出した魂(離魂)など、心と生死の境にまつわる現代の民話を全国から採集し収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明482話・市区町村判明386話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。