南設楽郡横山の或女(特に名を秘す)の話である
どんな伝承か
南設楽郡横山のある女、特に名を秘す者の話である。もう二十幾年前のことで、その女が二十のときである。一人の姉が一里ほど隔たった所に患っており、病勢がだんだん重くなったと聞いて、近いうちに一度見舞に行こうと考えていた。ちょうど姉が息を引取った晩のこと、部屋に一人で眠っていると、誰かが来て門の戸をとんとんと叩く。誰かと声をかけると、私だ私だと言うのは、患っているはずの姉である。驚いて起き出し、大戸を開けて招じ入れ、座敷へ引き上げて向かい合ったところ、またも門の戸を叩く音がする。思わず叫んだ自分の声で気がつくと今のは夢で、なお戸は激しく叩かれる。開けると村の衆が姉の死の報せに来ていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂(松谷みよ子・現代民話考・昭和50年代~60年代(推定))
松谷みよ子『現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂』を小話単位で全513話収録。夢のお告げ・予知夢、火の玉、ぬけ出した魂(離魂)など、心と生死の境にまつわる現代の民話を全国から採集し収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明482話・市区町村判明386話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。