もう五十年程も前の事であるが、村のてつと言う女、二十
どんな伝承か
今から五十年ほど前、南設楽郡の村でてつという二十幾つの女が、盗みの疑いをかけられ親類から離縁を言い渡されるらしいと立ち聞きし、旧暦四月末頃に家の梁で首を縊って死んだ。ちょうどそのころ信濃の善光寺に参詣していた村の源兵衛と鉄蔵が、朝の御籠りを終えて山門を出ると、白い手拭いに結城縞の着物を着たてつが群衆の中をうつむき加減にすれ違っていくのを見た。三河に帰ってから、二人はその日の朝にてつが死んだことを知って驚いたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』を小話単位で全699話収録。死の知らせ・予兆、あの世(地獄・極楽)へ行った話、死者からのサイン、生まれかわりなど、生死とあの世にまつわる現代の民話を全国から採集し地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明606話・市区町村判明489話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。