戸台の竹沢長衛さんの家は、フジブクロと呼ぶ場所にある
どんな伝承か
長野県上伊那郡の戸台では、竹沢長衛の家のあるフジブクロという場所から二百メートルほど離れた高い尾根筋の、ボケの藪陰で、ある年狼が子を産んだ。狼は歩くにも山の尾根を通り路に選ぶ獣なので出産も尾根で行われることが多く、人間を警戒するのに都合がよいからだと戸台の人々は解していた。出産のあとは夜の六、七時ごろになると決まって狼が恐ろしい声で鳴き、その声が村うちにも聞こえてくる。黙って放ってもおけないというので、出産七日目に庄屋の達しで赤飯を炊き、お産見舞に狼の巣へ持っていった。この儀礼を伊那谷ではひと七夜、お七夜祝いと呼んだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 10 狼・山犬、猫(松谷みよ子・現代民話考・1970年代~1980年代推定)
松谷みよ子『現代民話考 10 狼・山犬、猫』を小話単位で全541話収録。狼・山犬・猫にまつわる現代の民話・怪異譚(送り狼・化け猫など)を全国から採集し収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明535話・市区町村判明490話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。