風もないのに倒れかかった境向の大木
どんな伝承か
大正のはじめ、八天狗のあたりの山林を持っていた桑尾の坂本猪之助という人が、境向の木も自分のものと考え、売り払うつもりで高知市から仲買人を連れてきた。ところが境向へ足を踏み入れたとたん、風もないのに大木が猪之助のほうへ倒れかかった。驚いた猪之助は家へ逃げ帰った。この話を聞き伝えた人たちは、以来この境向の木を大切に守っている。近ごろ、榊の枝が根元に捨てられていたことがあった。聞けば、商売人が榊を伐って帰る途中で手がしびれて困り、もとの木の元へ返したのだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考・1970年代)
松谷みよ子『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』を小話単位で全532話収録。河童・天狗・神かくしにまつわる現代の民話・怪異譚を全国から採集し、地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明530話・市区町村判明477話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。