片目の狐お染と権八の祝言の提灯
どんな伝承か
昔、高部の老婆がオドウカンの森(稲生様)へ山芋掘りに出かけ、土の穴にいた子狐を鎌でかき回して片目をつぶしてしまった。その子狐は娘狐のお染に育ち、田や沼の向こうの羽計の一里の森に住む雄狐権八と恋仲になった。祝言のふるまいに困った権八は、夜ふけに里の家々を回って鶏を一羽ずつ譲ってくれとささやき、翌朝どの家でも鶏が一羽減っていた。その晩、二つの森のあいだに提灯が一列に連なってけた沼まで赤く照らし、次の晩には礼を言う影が現れて、朝にはどの家の軒先にも鮭が一匹置かれていたという。高部の稲生神社の使いは白狐だと伝わる。
原典より
高部のオドウカンの森から、羽計の一里の森まで無数の「ちょうちん」が一列になって続き、けた沼の水まで赤々と照らして、夜中に目ざめた里の人たちをおどろかせた。—— 東庄町史 下巻(東庄町) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
東庄町史 下巻(東庄町)
『東庄町史 下巻』は、下総の香取郡東庄にあたる千葉県東庄町の町史下巻のうち、「民話・伝説」の項である。須賀山の地名伝説、高部と羽計の狐の祝言、城山の大蛇、花香稲荷縁起、黒部川と児塚の由来、干潟十八ヶ村の名付け、姥捨ての定命窪など十五の項を収め、小南の七不思議や東庄七井の一覧も含む。半数あまりの項に伝承地の区名を添え、『かぎろひ』記念特集号や『県民の森の歌』、「上代郷明細記」「東荘志」、旧家文書などの出典を記す。