国勢調査に洩れるボン
どんな伝承か
不思議なことに、国勢調査の時に気をつけて見たが、どの部落にもボンは一世帯もいなかったと言った人がある。自分はこれを怪しまなかったが興味は感じた。日本の幽冥道の思想と同じく、ボンはこの国土の第二の住民であり、大団体とは共通せぬ利害を持つ者で、計算の外である。物静かな京都人が全部踊ったような祭の日にも、若王子山の松林に細い煙を挙げている者があるのを見た。事によると彼らの中の小賢しい者は、辻々の赤い掲示を見て、注意せよ十月一日を、この調査に洩れなかったらボンの恥ですと仲間に言ったかもしれない。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集)
柳田国男編『定本柳田国男集 第2巻』を全331話・伝説(1見出し=1話)単位で収録(緒言・序・名義・解説・和歌・注は除外/内包)。所在地(郡村区・社寺)を付して集成。