熊村の細君が聞いた狸の半鐘
どんな伝承か
およそ狸は他の獣よりも、色々な声を真似るのが巧みである。熊村で新たに知った細君などは、つい半月ほど前に、四人の同志とともに後ろの山に登り、盛んに薪を縛っていると、急に役場の脇の半鐘がけたたましく鳴り出した。五人が五人ともまさにその音を聞いたのである。大変だとそこらの高みから里の方角を見ても、煙らしいものは見えない。事によると狸かもしれないとよく心を落ち着けて、ともかく戻ってくると、在所は極端に平穏な午後二時の茶漬時であった。狸が半鐘の真似も上手なことだけは争われない。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集)
柳田国男編『定本柳田国男集 第2巻』を全331話・伝説(1見出し=1話)単位で収録(緒言・序・名義・解説・和歌・注は除外/内包)。所在地(郡村区・社寺)を付して集成。