膏薬をはった狐
どんな伝承か
島田市湯日本村の旧家滝家には屋敷内に稲荷が祀られ、その付近に狐が住み、子を連れた姿が屋敷内で見かけられたという。徳川末期のころ、ある夜、今の榛原町仁田の医師の門を夜遅く叩く者があった。家人が起き出て事情を聞くと、湯日の滝から来たが、家人が怪我をしたので薬をいただきたいと、ひどく鼻づまりの声で頼んだ。湯日の滝といえば隠れもない有名な旧家であり、当時の怪我の手当は焼酎で洗って膏薬を塗るほかなく、容器は貝殻と決まっていたので、この医師も膏薬を貝に入れて渡した。数日後、滝家の家人が屋敷内で狐を見かけると、怪我の所に膏薬をつけていたが、畜生の悲しさに貝ごとつけていたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第7巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)・現代(編纂)/伝承(口承))
『日本伝説大系 第7巻』所収の「文化叙事伝説」および「自然説明伝説」全97話(愛知・岐阜・長野・静岡=中部)を、各話の伝承地(市町村〜字レベル)とともに収める。