長福寺の鐘
どんな伝承か
昔、この寺の門前に貧しい門番が住んでいた。役の行者を深く信仰し、毎年欠かさず大和の大峰山に登って修行するのを唯一の楽しみとしていたが、旅費はいつも長福寺の住職に借りていた。その年、慈悲深かった先住は亡くなっており、後住はそっけなく断った。門番が泣き明かした翌朝、鐘撞堂の鐘が消えたと村中が騒ぎになる。住職は「貸す金があるものか、持てるならあの鐘を持っていけ」と言った己の言葉を思い出し、門番に詫びて旅費を与え自らも同行した。大峰山に登ると、鐘は山上の岩間の松の枝にかかっていた。住職は邪念を捨てて修行し立派な僧になったが、長福寺ではその後何度鐘を鋳てもひびが入り、完全にできあがったことはないという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第7巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)・現代(編纂)/伝承(口承))
『日本伝説大系 第7巻』所収の「文化叙事伝説」および「自然説明伝説」全97話(愛知・岐阜・長野・静岡=中部)を、各話の伝承地(市町村〜字レベル)とともに収める。