臨月の女が殺された小夜の中山の夜泣石
どんな伝承か
見た目には何の変わりもない物に伝説が付いている例として、静岡県の夜泣石がある。臨月の女が夫のもとへ向かう途中、この石のところで悪者に襲われて殺されたが、刀の傷口から男の子が生まれ、成長してのちに親の仇を討ったという。石のほうは怪しいことを起こして夜な夜な泣いたので夜泣石と呼ばれるようになった。弘法大師が久延寺に滞在したとき、この石に仏の名号を刻んで供養すると、それきり怪異は止んだと伝わる。夜泣石は長野県にもあり、各地には夜泣地蔵と呼ばれるものもあるという。
原典より
石のほうは怪異を生じ夜々泣いたのでこの名を生じた。—— 日本人物語5――秘められた世界(関敬吾(編)・日本人物語) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本人物語5――秘められた世界(関敬吾(編)・日本人物語)
『日本人物語5――秘められた世界』は、暮らしの奥に秘められた信仰や伝承を扱った全集『日本人物語』の一巻である。境の神や通過儀礼を論じる序論に続き、入らず山や隠れ里、竜宮、平家谷、埋蔵金、生まれ代わり、あの世を見た話、魔法使いと犬神落とし、生霊、隠れキリシタンや隠し念仏などを、伝承と昭和三十年代までの新聞記事・見聞を織りまぜて述べる。序論「生活文化の秘密性――はじめに」の後、「奇蹟」「不気味な神々」などの区分の下に短い節を並べる。