海を通う女
どんな伝承か
熱海市初島に伝わる話。初島がまだ六軒だった大昔、おはつという美しい娘がいた。伊豆山権現の祭典に出かけた折、右近という若者を見初める。右近は百夜通って誠を示せば添い遂げると告げ、娘は盥に乗り、秋葉山の常夜燈を目当てに夜の海を通い詰めた。九十九日目の夜、おはつに横恋慕して思いの通らなかった男が、意趣返しに娘が海の中央へ出る時刻を見計らって常夜燈を消した。目標を失ったおはつは波に巻き込まれて死んだ。それと知った右近は憐れんで後生を弔うため、墨染の衣に身を包んで諸国遍歴の旅に出た。火を消した男は七日七夜を苦しんで、ついに悶死したと伝えられる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第7巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)・現代(編纂)/伝承(口承))
『日本伝説大系 第7巻』所収の「文化叙事伝説」および「自然説明伝説」全97話(愛知・岐阜・長野・静岡=中部)を、各話の伝承地(市町村〜字レベル)とともに収める。