吉剣を返した武士
どんな伝承か
天明の頃、京都に新井謙吉、号を白峨という学者がいた。世上に妖異談や幽霊談、呪術や卜易が流行することを苦々しく思い、『闇の曙』を著して愚俗を惑わす道具を列挙した。その中に吉剣流行についての一話がある。京都二条に大坂屋久兵衛という刀こしらえ屋がいて、丹波守吉道作のいわゆる吉剣という売物を手に入れ、ある武士のもとへ持参して求めるよう勧めた。武士が誰の所持でなぜ売るのかと問うと、久兵衛は相応の人物だが金子が払底し当用に差し支えるからだと答えた。すると武士は、吉剣を持ちながら貧乏するのなら吉剣は益に立たぬ、武士は骨が切れれば事足りると言って迷信を退けたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の妖怪(早川純夫・早川純夫・妖怪史・昭和)
早川純夫『日本の妖怪』。神話時代から江戸まで、日本の妖怪と妖異を歴史の流れに沿って描く。