妖魔の恋
どんな伝承か
顔にさざ波のような皺をたたえ、年のほどもわからぬ三人が、仲よく店先の縁に腰をおろし、通りすぎる物売りや旅人を眼で追いながら、半刻近くも互いの話に耳を傾けていた。話し続ける嫗は、どうやら昔、染殿の后に仕えた女官であったらしい。その語るところによれば、美貌の噂高い染殿の后は、なぜかものの怪が憑きやすく、常に伏せりがちであった。文徳帝や父の藤原良房は大層これを憂え、世に並びない僧や修験者を呼び集めては加持祈禱を尽くしたという。文徳・清和・陽成の三代、宮廷を舞台に登場した妖物をめぐる物語である。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の妖怪(早川純夫・早川純夫・妖怪史・昭和)
早川純夫『日本の妖怪』。神話時代から江戸まで、日本の妖怪と妖異を歴史の流れに沿って描く。