何鹿郡に出た二十八人の発狂者
どんな伝承か
明治二十四年、京都府の何鹿郡では二十八人もの発狂者が出たと伝えられる。この土地の製糸業には明治十五年に器械製糸が入り、それまで女たちが手で担ってきた糸引きの仕事は次第に消えていった。出口なおも糸引きで暮らしを立てていた一人で、職を失うと襤褸買いや紙屑買いに回り、ついには乞食にまで身を落とすことを神から与えられた務めと受け取った。なおと二人の娘に起きた神がかり、あるいは狐憑きも、村と職人の世界が崩れてゆく流れのただ中で生じた出来事だったと著者は見ている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幻視する近代空間 ―迷信・病気・座敷牢、あるいは歴史の記憶(川村邦光・現代(近代史研究))
民俗学者・川村邦光が、近代日本が在来の習俗や憑きもの信仰をいかに〈迷信〉として再編し、狐憑きを脳病・神経病・憑依妄想へ病理化したかを、具体的事件・事例に即して論じた近代史。