郁子の念射と味覚試験
どんな伝承か
明治四十四年一月三日、丸亀に滞在していた今村博士は二人の学士を伴って長尾判事の家を訪れ、判事と幾子夫人を加えた六人で、感光と味覚の試験を行った。まず二枚の乾板を重ねたうちの一枚だけに感光させる方法で、夫人は二十六秒で「一」の字を念射し、乾板には深く鮮明な字が現れた。夜になってから、見分けのつかない白砂糖と食塩を紙包みにして混ぜ、一つを黒塗りの小箱に入れて味を当てさせると、夫人は口を動かしたのち、白くて塩辛いものだと答え、開けると確かに塩だった。
原典より
幾子夫人は『色は白く鹽辛いものです』との事にぞ今村博士等は實験に供したる紙包を取出して之を舌に乗せて試味せしに夫人の明言せる如く紛れもなき鹽なるより…—— 心霊哲学の現状(高橋五郎・1919年(大正8年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
心霊哲学の現状(高橋五郎・1919年(大正8年))
『心霊哲学の現状』は、高橋五郎が大正八年に著した心霊研究の概説書である。英国のロッジが戦死した子レイモンドの霊と交わした冥界通信をはじめ、欧米の交霊術と霊媒の実例を訳して紹介し、日本の催眠術と千里眼の流行、御船千鶴子・長尾郁子の事件、霊光や念写までを論じる。篇と章に分け、心霊哲学とキリスト教、クリスチャン・サイエンス、淘宮術との関係や、太霊道など国内の霊術諸派も取り上げ、ところどころに評註を添える。