有峰の酔いどれトロッコ部隊
どんな伝承か
北アルプスの西側にある有峰はむかしの鉱山跡で、当時は秘境に属していた。富山から有峰を通って黒部の源流地域へ入ろうと、そろって酒好きの四人が立山山麓へやって来て米を現地調達し、交渉を引き受けてくれた飲み屋のオバサンへの礼を兼ねてビールを飲んだ。ところが背中からジリジリ照らされる草いきれの中を二〇〇メートルばかり直登してトロッコ道へ登ったときには汗が滝のように出て、完全にのびてしまった。先を見ると軌道の上にトロッコが一台置いてあったので荷物を載せ、足で蹴飛ばしながら進んで四時間の行程を楽しくすませた。登りの前に飲む酒は山に登る気持ちまでなくすと著者は結ぶ。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
山とお化けと自然界(西丸震哉・山岳・怪異エッセイ・昭和(戦後))
西丸震哉『山とお化けと自然界』を篇単位で収録。完全装備で岩小屋前を通過する遭難者の幽霊目撃、木曾御岳の人魂たち、カラステングがタコを食う、亡き兄との交信やテレパシー(死者との通信)、幽霊の仮説・怪談といった山岳怪異譚を軸に、呪い殺しの実験・雨やみの術・日蝕と雨やみの術などの呪術、山の昆虫・メスネコの生涯・ヤマネとムササビ・ミミズク等の自然観察、酒・山旅・会津の秘境/栗駒山密林などの紀行随想を収める。