夕張岳に響く女の子の声
どんな伝承か
2002年10月末、筆者は林道が閉鎖されて人の絶えた時期を選び、北海道の夕張岳に一人で登った。山頂から下る途中、登山道が尾根の馬の背コースと谷の冷水コースに分かれる分岐で休んでいた午後3時過ぎ、馬の背の方から大人の女性と女の子が楽しげに笑う声がすぐ近くで聞こえた。待っても誰も現れず、足音も熊鈴の音もしない。馬の背コースを駆け下りて追ったが人影は無く、無人の山小屋に置かれた記帳ノートの最後の書き込みは2週間ほど前だった。のちにこの体験を所属する山の会のホームページに載せると、同じ場所でまったく同じ声を聞いたという便りが3人から届いたという。
原典より
なにやら楽しそうに会話しながら登ってくる声が、尾根上に続く馬の背のほうから聞こえてきた。—— 水辺の怪談3(水辺の怪談) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
水辺の怪談3(水辺の怪談)
『水辺の怪談3』は、釣り人が海や川、湖で出遭った怪異を、多くは体験者自身の筆で綴った実話怪談集である。東京湾の夜の一本釣り、男女群島の瀬泊まり、サイパン、北海道の夕張岳、利根川の利根大堰、大井川上流の支流などでの出来事を二十編収め、「海の章」と「川・湖の章」の二部に分ける。前半の十二編には、冒頭に書き手の居住地や釣りの経歴を記した短い紹介が付く。