宿直室の戸を叩く音に眠れぬ三教師
どんな伝承か
大正のころ、北海道の夕張小学校に現れた幽霊と教員たちの問答は、世間の好奇と研究の的になった。同校の宿直室では三人の男性教師が自炊して寝泊まりしていた。ある真夜中、目を覚ましたAは誰かが戸を軽く叩く音を聞いた。声をかけると止み、窓の外のポプラに風が渡るばかりなので、いたずらだろうと思って眠った。もう一人も同じ音を聞いた。次の夜も戸を叩く音がし、大声でとがめると止んではまた始まった。午前二時ごろ、おびえたCが仲間を起こして話していると、ストンと音がした。Bが黙って戸を開けたが人影はなく、三人はそれから怪音に悩まされて眠れなくなったという。別に校長が雑誌へ寄せた報告では、宿直は桑島正・中村清・佐藤榮一の三人で、宿直室は校長室の隣にあった。二月十七日の夜、就寝後まもなく校長室で時計を持ち去るような音がしたが何もなく、続いて入口の戸が鳴った。音は毎夜続き、五日ほどして試しに三つと言えば三つ、七つと言えば七つ鳴り、速さの注文にも応じたため、校長に報告して二十七日の夜に問答することになった。
原典より
Bは突然起ち上がり物も云はずにガラツと……を開けました、……の……も影も見えない。—— 幽霊は語る(梶天真・1938年(昭和13年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幽霊は語る(梶天真・1938年(昭和13年))
『幽霊は語る』は、梶天真が編んだ幽霊譚と幽霊論の集成で、昭和十三年に文明社から出た。新聞・雑誌の記事や井上円了・柳田國男・高峰博らの所説、古典の文を出典を添えて引き、葬送の習俗や布哇の霊魂観から説く幽霊思想、幻覚や網膜による説明、乃木大将が見た我が子の幽霊などの実話を集める。三篇に分かれ、第二篇は男女の幽霊・怨霊・生霊・小児の見た幽霊・前知らせなど八項、第三篇は幽霊写真・化物屋敷・霊界通信を扱い、巻末を夕張と筑前の幽霊問答で結ぶ。