取調べの背後に立った養女の影
どんな伝承か
東京浅草区新福富町、現在の寿町一丁目十番地の三軒長屋に、松村関蔵という貧しい男が住んでいた。大正十二年七月七日の晩から、八つになる養女のお初が行方不明になった。お初は手癖が悪く、関蔵と内縁の女房金崎巻にいつも折檻され、その泣き声が近所に聞こえていたが、その晩は泣き声がばったり止み、代わりに家の猫が厭な声で鳴いたという者もあった。噂は警察の知るところとなり、横山ら三人の刑事が家へ入った。土間へ入るなり厭な気がし、名を問うと夫婦の背後にぼうとした影が映った。検挙して取り調べると、夫婦は逆さ吊りにして撲るうち絶息させ、死体を細断して床下に埋めたと自白した。近所の者は石地蔵を作って冥福を祈った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫版・決定版・昭和13年編纂(1938年))
日本怪談実話(田中貢太郎)/幽霊と怪光の実話/怨霊と祟り・因果/死の前兆と怪音/各地の怪異実話