放生津物語(続き)
どんな伝承か
放生津の草原で、為作の嫁のお勝が牧野家からの帰りに近道をしたところ、松の陰に待ち伏せていた背の高い暴漢に帯の端を掴まれた。もみ合ううちに帯の結び目が解け、お勝は膝を突いて絶体絶命となった。女の叫び声を聞いた舅の為作が刃物を持って駆けつけると、暴漢は手習師匠をしている地下浪人の林田与右衛門だった。林田は為作の手元につけ入って刃物を奪い、振りかぶった。その眼の前に、薙刀を二つ組み合わせたような紫色を帯びた大蟹の鋏が不意に閃いた。林田は驚いて刃物を投げ捨て、眼を押さえて逃げていった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の怪談(二)(田中貢太郎・日本の怪談シリーズ・明治末~大正期(推定))