放生津物語
どんな伝承か
越中の放生津の町なかにある、松や榎の飛び飛びに生えた草原は、町の子供の遊び場だった。その中ほどの枝の禿びた榎の古木の下に、お諏訪様と呼ばれる小さな祠があり、そぎ葺きの屋根も朽ちて木連格子は黒ずんでいた。初夏の夕方、沢蟹を追っていた五、六人の子供が祠の前で戦ごっこに飽き、草の上に腰をおろして怪談を語り合った。神通川のほとりのあんねん坊の麓に出るという小百合のぶらり火の話、放生の湖に棲み川幅が狭くて海へ出られない亀の主の話、湖で寝ているうちに自分が黄色い大きな鮒になって龍宮のような御殿へ行った男の話などである。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の怪談(二)(田中貢太郎・日本の怪談シリーズ・明治末~大正期(推定))