老婆の正体
どんな伝承か
飛脚は佐喜の浜の鍛冶屋を訪ね、母が怪我をして傷を見せないと聞くと、金創の薬をつけてやろうと申し出て、二人で家の右手から裏口へ回った。小さな木炭納屋の中、莚を積み重ねた上に背の高い老婆が足を投げ出して寝ていた。頭は穢い衣の破れでぐるぐる巻きにされている。飛脚が声をかけると老婆はきっと睨み、みるみる口が耳の方まで裂けて「昨夜の侍じゃな」と吠えるような声を出し、恐ろしい獣の姿になった。鍛冶は驚いて気絶し、飛脚は刀を抜いて怪狼の咽喉元を刺し通した。怪狼は一、二年前に鍛冶の老母を食い殺して化けていたのだった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の怪談(二)(田中貢太郎・日本の怪談シリーズ・明治末~大正期(推定))