三本辻へ送り出した憑きもの
どんな伝承か
有馬でのこと。ある人に憑きものがついた。当人は腹へ火箸を突き刺し、これで出入口ができたと喜ぶ。膏薬を貼ってやれば、そこが出入口だといって剥がしてしまう。油揚げの寿司など好きな物をねだるので家族が用意すると、隠れて口にした。戸の隙間からうかがえば、覗かれていては食べないと言い、人目のあるうちは箸をつけない。困った家族が出て行ってもらおうと三本辻にごちそうを並べて送り出したところ、憑きものは長らく世話になったと礼を述べて去ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
渋川市誌 民俗編(市史編纂シリーズ・1980年代-1990年代推定)
本書は群馬県渋川市の民俗編として、地域に根ざした信仰体系と死生観を記録した資料である。民間信仰と俗信を既成宗教以前の下部構造と位置付けた上で、死の前兆(人魂現象、予知)、生死の境での異世界体験、死後の蘇生・生き返り、転生輪廻などの多様な事例を収集している。特に行幸田地区では生き返り事例が集中し、地域固有の信仰と関連する可能性が高い。