馬に蹴られて花野から呼び戻された男
どんな伝承か
石原の話。語り手の兄が村の若者と山へ草刈りに行き、馬をつないで仕事をしていたところ、何かの拍子に馬が逃げ出した。取り押さえようとして馬に蹴られ、たちまち顔色が変わって死人の相になった。皆がありったけの声で名を呼び続けると、兄は意識を取り戻した。本人によれば、花の咲く美しい野原へ引き寄せられて心地よくしていると、誰かが自分の名を呼ぶ。気がつけば体が痛くてたまらない。呼ばないでくれればいいのにと思っていたが、何度も呼ばれるので、とうとう目を覚ましてしまったのだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
渋川市誌 民俗編(市史編纂シリーズ・1980年代-1990年代推定)
本書は群馬県渋川市の民俗編として、地域に根ざした信仰体系と死生観を記録した資料である。民間信仰と俗信を既成宗教以前の下部構造と位置付けた上で、死の前兆(人魂現象、予知)、生死の境での異世界体験、死後の蘇生・生き返り、転生輪廻などの多様な事例を収集している。特に行幸田地区では生き返り事例が集中し、地域固有の信仰と関連する可能性が高い。