誰も触れぬのに鳴った庖丁
どんな伝承か
五、六歳のころ、昭和十一、二年ごろのことだという。清瀬で養鶏場を営みながらイタリア語の翻訳もしていた伯父がいたが、外科医が暇つぶしに盲腸でも切ってやろうかとふざけて腹を切ったところ、そのまま死んでしまった。当時の家は子供部屋と居間と父の部屋がある平屋だった。その居間で、出しっぱなしにしてあった庖丁が、誰も触れていないのにチャリチャリンと大きく鳴った。父は、これは何かあると言って和服を脱ぎ、出かける支度を始めた。そこへ電報が届き、清瀬の伯父の死が知らされた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』を小話単位で全699話収録。死の知らせ・予兆、あの世(地獄・極楽)へ行った話、死者からのサイン、生まれかわりなど、生死とあの世にまつわる現代の民話を全国から採集し地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明606話・市区町村判明489話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。