閻魔の前で一生を問われた父
どんな伝承か
昭和十二、三年頃、丸子町の父親が丹毒から敗血症を起こして生死の境をさまよい、辛うじて命を拾った。そのとき見た夢は、果てしなく広い場所に花が咲き乱れ、澄んだ水が湧き続け、周囲では子供たちが群れて遊んでいるというものだった。父は昭和十九年、胃穿孔で亡くなる。看取った母によれば、意識のないまま、まるで位の高い者に問われて答えるような厳かな調子で、二十年このかた胃痛の絶えぬ日はなかった、子は六人ある、などと述べたという。あれは閻魔の前で一生を調べられていたのではないかと、身内は後に語り合った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』を小話単位で全699話収録。死の知らせ・予兆、あの世(地獄・極楽)へ行った話、死者からのサイン、生まれかわりなど、生死とあの世にまつわる現代の民話を全国から採集し地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明606話・市区町村判明489話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。