難産の手術で出た青草と花の野原
どんな伝承か
昭和二十年頃、尾崎の浜岡ひさえは三人目の子を宿して八か月というとき、腹痛とともに出血を繰り返した。産婆に勧められても医者にかかるのを恥ずかしがって寝ていたところ、ついに大量の出血で気が遠くなり、担ぎ込まれて開腹手術を受けた。手術の最中、メスの音や人声、赤子の泣き声が聞こえ、やがて手招きする者に導かれて青草と花に埋もれた広い野原へ出たという。足は驚くほど軽く、空気の香りがよいので思い切り吸い込んだ。誰かに肩を突かれ、せっかくよい心地でいるのにと思った瞬間に目が覚め、夫が顔をのぞき込んでいた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』を小話単位で全699話収録。死の知らせ・予兆、あの世(地獄・極楽)へ行った話、死者からのサイン、生まれかわりなど、生死とあの世にまつわる現代の民話を全国から採集し地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明606話・市区町村判明489話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。