松並木の道を急いだ仮死の十時間
どんな伝承か
佐々木の友人の母が病んだ折、医師がモルヒネの分量を誤って注射したため、十時間近くも仮死の状態に陥った。夜の九時頃に息が絶え、体もすっかり冷たくなったのに、翌朝方には息を吹き返したので周囲は奇跡だと驚いた。当人が語るには、体は重くだるかったが、行く手に美しい場所があるように感じられ、一刻も早く着きたい一心で松並木の広い道を急いでいたという。後ろから自分を呼ぶ声が聞こえ、心ないことをすると腹立たしく思ううち、声は耳元まで迫り、しかたなく引き返した。戻るのがひどく厭だったと語った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』を小話単位で全699話収録。死の知らせ・予兆、あの世(地獄・極楽)へ行った話、死者からのサイン、生まれかわりなど、生死とあの世にまつわる現代の民話を全国から採集し地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明606話・市区町村判明489話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。