日大病院の手術中に見た暗い河原
どんな伝承か
昭和四十三年五月、神田駿河台の日大病院で耳の手術を受けた。術後は手術した側の耳を上に向けていなければならず、音のない世界に置かれた。寝ていて息苦しくなり、布団をはねのけようとしても体が動かない。そのうち大きな寝台に横たわる自分がだんだん小さくなって見え、白いシーツの真ん中に穴が開いて、奈落へ吸い込まれるように下へ落ちていった。着いたのは風も音もない暗い河原で、草が生い茂っていた。向こう岸から早く渡れと促す声がするが、橋も舟もない。渡れる気がして進もうとすると、もう一人の自分が引き止めた。そこで掃除に来た女性に揺り起こされた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』を小話単位で全699話収録。死の知らせ・予兆、あの世(地獄・極楽)へ行った話、死者からのサイン、生まれかわりなど、生死とあの世にまつわる現代の民話を全国から採集し地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明606話・市区町村判明489話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。