天狗による札と金銭の配布(大坂と結びついた伝説)
どんな伝承か
尾道では慶応三年十一月末から諸神社の御札降りが始まり、町中五、六百軒も降ったといい、昼夜を分かたず踊りが続いた。降った家では内に七五三を張り、門に笹を立てて諸人へ酒を酌み飲ませた。その頃、当所新開新店の万兵衛方に出入りする十五歳の熊吉という者が、先だって大坂へ奉公に行き、ある家に勤めていたところ、鞍馬山の天狗様が白髪の老人の姿で現れて熊吉を呼び出し、御札と多くの金子を持たせて配らせたという。熊吉は、中空に道があってそこを往来したのだと話した、と尾道一宮社文書は伝えている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
尾道市史 -新修-第2巻(尾道市史・20世紀後半(推定))
本書は広島県の幕末社会に発生した一連の集団的異常現象を記録した歴史資料である。1864年11月から1865年1月にかけて、尾道と竹原を中心に発生した「お札降り」現象と「ええじゃないか踊り」は、単なる超自然現象ではなく、飢饉による経済的窮迫と社会秩序の崩壊を背景とした民衆心理の集団的狂乱であった。尾道での空からの御札降下、竹原での諸神札降臨は、やがて集団仮装踊りへ転化し、最終的には翌月の打ちこわし暴動へと発展した。