大正七年六月の始めでしょうな
どんな伝承か
大正七年六月の始め、真竹の生える時季のこと。筍を一貫目ほど持って歩いていると、大門の手前でだんだん日が暮れてきた。急がねばならないと思い、杖の棒で道を叩きながら行くと、向こうから白い犬のようなものが走ってきて、笹原から出て右の足をかすめていった。それから一、二町行った、右へ回る所で、大きな米俵ほどの白いものが立っている。今頃こんな所に米俵がと思いながら五、六間歩くと、道端の下の草原に七〇過ぎのような親父がしゃがんでいた。豆絞りの手拭いで鉢巻をし、額の皺の数までよく見えた。どう考えても謎が解けず、狸の芝居だったのだと語る。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1970年代~1980年代)
松谷みよ子『現代民話考 11 狸・むじな』を小話単位で全376話収録。狸・むじなにまつわる現代の民話・怪異譚(化かし・化け)を全国から採集し収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明372話・市区町村判明317話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。