大正の一○年ごろであった
どんな伝承か
徳島県美馬郡半田町の土井広一の話。大正の一〇年ごろであった。親類の家で泊まっていると、おばが起こしに来て「あれが狸の火じゃ、見てみい」と言う。山手の方を見ると、井黒さんと観音さんの間を五つ六つ提灯が動いている。ところがそう見えるだけで実は動いておらず、手前の木の間から透かして見るとひとつも動かない。ぼんやりした火で後光も射さない。狸が葬儀のまねをしているのだと言っていた。ニワトリが鳴くとみな消えてしまった。狸の提灯行列は川の向こうや谷の向こうなど、すぐには行けない所でないと出ないらしい。自分が一五、六の時分のことで、おばも一緒に見たので間違いないという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1970年代~1980年代)
松谷みよ子『現代民話考 11 狸・むじな』を小話単位で全376話収録。狸・むじなにまつわる現代の民話・怪異譚(化かし・化け)を全国から採集し収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明372話・市区町村判明317話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。