金沢浅野町の青年天井に落つ
どんな伝承か
石川県金沢市の浅野町で明治十年頃に起こった出来事である。徳田秋声の家の隣家に住む二十歳ばかりの青年が、ちょうど徳田家の高窓の外にあった地境の大きな柿の樹の下に下駄を脱ぎ捨てたまま行方不明になった。捜しあぐねていると、不意に天井裏にどしんと物の落ちた音がした。徳田の兄が頼まれて上がってみると青年が横たわっていたので、背負って降ろしてやった。木の葉を噛んでいたと見えて口の端が真っ青だった。半分正気づいてから仔細を問うと、大きな親爺に連れられて諸所方々を歩き御馳走を食べて来た、また行かねばならぬと言って駆け出そうとしたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
柳田国男編『定本柳田国男集 第4巻』を全822話・伝説(1見出し=1話)単位で収録(緒言・序・名義・解説・和歌・注は除外/内包)。所在地(郡村区・社寺)を付して集成。