ゆきよし様と浪合記の悲話
どんな伝承か
諏訪から天竜川筋へ通じる遠山道の一帯は、高嶺に囲まれて四境の擾乱が無く、地味も穀作に適し、領主香坂氏の孤立も自信のあるものであったらしい。この家の終始変わらぬ勤皇が根となって、宗良親王の甲信経略や、上州の新田氏族党と遠州井伊谷との交通が容易に行われたのみならず、後年はさらに『ゆきよし様』の御最期という、かの浪合記の物語までを成長させ得たのであった。浪合記は全部が本当のことだろうとは思われないが、そうした言い伝えの起こるべき素地ないし傾向は早くから備わっていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集)
柳田国男編『定本柳田国男集 第2巻』を全331話・伝説(1見出し=1話)単位で収録(緒言・序・名義・解説・和歌・注は除外/内包)。所在地(郡村区・社寺)を付して集成。