火の及ばなかった大神宮の御山
どんな伝承か
天明の噴火のさなか、樫立村の名主市郎右衛門らは青ヶ島から迎えに来た補理舟に救い穀を積み、八重根を出帆した。夜、海上六、七里の沖まで来ると、山焼けの火で空も島山も真昼のように明るく、時折ひらめく炎が波を照らして凄まじかったという。翌朝どうにか西浦へ着けて穀を渡し、島の様子を見ようとしたが、南風に池の沢の黒煙と灰砂が吹き付けるので急ぎ引き返した。このとき八丈へ伝わった話として、島の大神宮の御山だけは火が及ばず、そこへ逃れた者は皆無事だったという神徳の有難さと、崖の上で一頭だけ生き残った牛のことが語られた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第1巻(柳田国男・定本柳田国男集)
柳田国男編『定本柳田国男集 第1巻』を全451話・伝説(1見出し=1話)単位で収録(緒言・序・名義・解説・和歌・注は除外/内包)。所在地(郡村区・社寺)を付して集成。