娘が大蛇となった姿見ずの橋
どんな伝承か
中野の里に鈴木九郎という気丈な男がいた。紀州から流れてきて、武蔵野の原で一貫文の痩せ馬を買って売ることから身を起こし、田畑を広げて長者となる。娘の露野は評判の美しさで、里の若者が競って婿入りを望み、なかでも高田の小太郎という物持ちが叔父の市谷左源太を立てて話をまとめた。婿入りの前夜、熊野の森に黒雲が湧いて大風と豪雨が起こり、長者の家から大蛇が走り出て十二社の池へ躍り込んだ。それが娘の化身だった。怨霊は橋のたもとをさまよい、輿がその橋を渡ると新婦の姿は消えて落合の村で見えたという。姿を隠した橋を姿見ずの橋と呼ぶ。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)・現代(編纂)/伝承(口承))
『日本伝説大系 第5巻』所収の「文化叙事伝説」全104話(千葉・山梨・神奈川・埼玉・東京=関東甲信)を、各話の伝承地(市町村〜字レベル)とともに収める。