おさん狐
どんな伝承か
むかし、江波の山に人を化かす狐が住み、土地の人はおさん狐と呼んでいた。ある日、宮島での勤めを終えた能役者が、江波から野面の一本道を家へ急いでいた。寒さに能面をかぶると、藪から美しい娘が現れる。おさんだと察した役者が鬼の面に替えると娘は鬼になり、翁の面を出すと白髪の老人に変わり、化け比べが続いた。ついにおさんは降参し、上手に化ける法を教えてくれと願う。役者は能面を入れる黄色い袋を渡し、これをかぶって心に念じ一回まわれと教えた。ほどなく、京大阪へ通う乗合船の中で黄色い頭巾をかぶった狐が寝込んでいて、船頭に取り押さえられ最期をとげた。伏見稲荷で修業し直すつもりだったのだろうと噂されたと伝える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第10巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)・現代(編纂)/伝承(口承))
『日本伝説大系 第10巻』所収の「文化叙事伝説」および「自然説明伝説」全85話(岡山・広島・山口=中国地方)を、各話の伝承地(市町村〜字レベル)とともに収める。