重箱の一重だけ返す弔いのおうつり
どんな伝承か
贈り物の器に少しだけ入れて返すおうつりは、次の贈り物を誘い出す仕掛けだと説かれ、繰り返しを望まない弔いの席では用いないものだといわれる。ところが実際の習俗はそうでもない。静岡県由比町の舟場では、葬儀にあたって濃い親戚が餅や饅頭を四重ねの重箱一提げに詰めて持参する。葬式のあとの酒宴が終わると、その餅や饅頭は席に着いた人々へ返礼として配られるのだが、重箱一提げを持ってきた者には、四重のうち一重だけに入れて返されるのである。凶事の場でもおうつりは生きていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊魂の行方(最上孝敬・最上孝敬・葬送民俗・昭和(民俗学))
民俗学者・最上孝敬『霊魂の行方』。日本各地の葬送習俗を実地調査し、死者の霊魂がどこへ行きどう処理されるかを論じた葬送民俗研究の集成。