鏡に映った侍女の裂けた口
どんな伝承か
ある旗本が娘の教育係となる侍女を探していたところ、谷中の法恩寺の住職の口ききで、中年に近い品のよい女を雇うことができた。和歌の心得もあり筆も達者で、よい人を得たと旗本は喜んだ。ところがある晩、娘の部屋をのぞくと、娘は寝入っており、侍女だけが鏡に向かって鉄漿をつけている。その鏡に映った顔は、口が耳もとまで裂け、耳は後ろへぴたりと反っていた。旗本は翌朝、子細あって暇を出すと告げる。侍女の目は吊り上がり、口はみるみる耳まで裂けて、にじり寄ってきた。抜き打ちに斬りつけると、女は叫んで息絶え、やがて途方もなく大きな老猫の姿になった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の妖怪(早川純夫・早川純夫・妖怪史・昭和)
早川純夫『日本の妖怪』。神話時代から江戸まで、日本の妖怪と妖異を歴史の流れに沿って描く。